航空自衛隊 新初等練習機 T-7


2002年7月 宇都宮飛行場


2002年9月 宇都宮飛行場上空

航空自衛隊の航空学生が初めて空を飛ぶために使用する初等練習機はこれまでT−3が使われてきたが、採用されて既に20年を経過。防衛予算削減に伴う装備品価格の見直しという点から観も、その後継機の選定が1997年から急がれていた。1998年に防衛庁の要求に対して当初の選定には30社余りが参加したが、6月中旬の提案段階で5社が応じたが3社が辞退。富士重工業と、丸紅を輸入代理店とするスイスの航空機メーカー「ピラタス」社の2社にまで絞り込まれた。結果、航空自衛隊新初等練習機の選定は、富士重工が8月19日に落札した。具体的には、1999年度2機、2000年度に8機、その後、段階的に合計50機の納入が行なわれる予定であった。こうしてT-3初等練習機の後継機に富士T-3改を選定し、T-7という名称まで決まっていた。しかし、海上自衛隊用の救難飛行艇の開発に関連し、富士重工の会長等が贈賄容疑に問われたことから防衛庁では富士重工に対し、1998年12月から1年間の入札参加停止の措置を執ったために同社の新初等練習機の選定を取り消されて1999年度の1号機発注は見送られた。その後2000年9月25日にピラタスPC-7MK-Uとの再度の入札の結果、再び富士T-3改が落札され、選定された。

新初等練習機 T-7は設計段階から、運用部隊での整備・補給といったライフサイクル・コストを低減するため、機体本体は現有のTー3との共通化が図られているのが特徴で、整備面では約60%が現状のままの体制で実施できる。一方でエンジンや、コクピット内の計器、通信・電子機器類などは一新された。改良された点では、エンジンは従来のレシプロエンジンからロールス・ロイス(旧アリソン)250−B17Fターボプロップエンジンを搭載し、最大(離昇)出力が450hp、連続出力も380hpへと大きくアップした。これにより機体の運動性能が高まり、ロールやスピンなどほとんどの曲技飛行が安全に行えるようになった。エンジン自体もコンパクトになり、重量も低下。このためバランスを取るためにノーズ部分がTー3よりも伸び、機体シルエットもよりスマートになった。エンジンのターボプロップ化で騒音の低減も図られている。また航空学生が初めて搭乗する航空機となるため、パイロットの居住性や操縦性に配慮。最近の学生は平均身長が伸びているため、コクピット内部を拡大。座席からフットペダルまでの距離も延ばされた。これで航空学生の95%に適応するという。 一新された計器盤は上級のT−4にスムーズに移行できるよう各種計器を配置、視認性も向上した。また、炎天下での操縦でもコクピット内が暑くならないよう冷房装置(エアコン)が装備された。T-7は、平成12年度の2機に続き、平成13年度11機、14年度10機がすでに調達されている。今後、静浜基地の11飛行教育団、防府北基地の12飛行教育団で使用されているT−3に代わって配備され、最終的には49機が調達される見込みだ。量産1号機(26-5901)は2002年6月20日に報道陣に公開され、同年7月9日に初飛行した。最初に調達された2機が同年9月19日に納入され、飛行開発実験団(岐阜)で運用試験が行われたのち、2003年3月27日に部隊使用承認が下りて正式にT-7という名称になった。この2機は、2003年4月に第12飛行教育団に配備され、4月3日に防府北基地に到着した。

H16年度までに、12飛教団’(防府北)及び、1術校(浜松)に配備され、H17年度より11飛教団(静浜)へ配備が開始された。

全幅 10.04m
全長 8.59m
全高 2.96m
最大離陸重量 1,585kg
発動機 ロールスロイス[旧アリソン]250-B17F ターボプロップ×1
連続出力 380hp
燃料容量 99gal(機内)
巡航速度 380km/h
乗員 2名

調達価格:約2億4千万円/機(12年度調達)