航空自衛隊輸送機


北宇都宮駐屯地(30周年記念行事 2003.5)


北宇都宮駐屯地(30周年記念行事 2003.5)

後部貨物扉オープン
百里基地(航空観閲式 2002.10)


北宇都宮駐屯地(T-7領収 2002.9)

C-1はカーチスC-46Dの後継機として1966年に日本航空機製造(NAMC)にて開発がスタートしたターボファン双発の戦術輸送機です。物資貨物を輸送する中型輸送機として川崎重工が主設計を担当して開発されました。

自衛隊のそれまでの輸送機はアメリカからの供与機であるC−46Dを使用していましたが これはすでに旧式化していました。 第2次大戦までの輸送機といえば旅客機を転用したようなお粗末なもので、速度は遅く、床が高く、扉は小さくて貨物の搭載には不便なものでした。カーチスC-46Dもそれに漏れず、YS-11も事情は同じで人員輸送はともかく、簡易な貨物輸送がせいぜいでした。

当時の自衛隊に輸送機に対する要求は以下の様なものでした。
・日本を無補給で飛行可能な航続距離を有する
・高速飛行で全天候性能がある
・空挺降下と物資投下が可能
・離着陸の滑走距離が短いこと
これら自衛隊独自の要求を満たせるものが当時の既存輸送機には無く、独自開発を決定しました。

量産型は川崎重工を主契約社とし日本の主要航空機メーカーがサブコンとなり生産されました。NAMC製の試作機XC-1の初号機は1970年11月12日に初飛行し、2号機以降は川崎重工が最終組立を行いました。
各社の生産分担は下記の通りでした。
・川崎重工:前部胴体、中央翼、最終組立
・三菱重工:中部胴体、後部胴体、尾翼、エンジン
・富士重工:主翼(動翼除く)
・日本飛行機:動翼(エルロン、フラップ等)、パイロン
・新明和 :搭載装置、エレベーター

XC-1の初号機は1971年2月14日に航空自衛隊に引き渡され、以降10年間製造が続き、1981年10月21日までに計31機が引き渡されました。1983年からは夜間及び悪天候時に編隊飛行や物資投下精度を向上させるSKE装置(編隊内の航空機相互の位置関係を操縦者に知らせる装置)を、飛行開発実験団で空中試験機(FTB)として使用されている001を除く、全機の胴体上部に設置する改修を実施しています。また、1機だけ改造された電子戦(ECM)訓練機EC-1(#021)は1984年12月3日に初飛行、1986年1月31日に航空自衛隊に納入され、同年7月16日から運用が開始されています。

 当時としては斬新な双発ジェットエンジンで高速性能を満たし、高翼配置に低床で胴体後部が大きく開くローディングランプ付き貨物扉を採用。また着陸せずに空中から物資を投下することも可能です。新設計の高揚力装置により大型で複雑なフラップを採用して短距離での離着陸性能を備えました。離陸滑走距離が荷物8t搭載で1200mで 着陸滑走距離が900m、スラストリバーサー(逆噴射装置)使用で450mという性能を持ちえています。これで日本国内の全ての飛行場へ離着陸できます 。そのため災害発生時でもどこへでも飛ぶことが可能です.。輸送機とは言え中型軍用機であり 、空荷の状態であれば70度バンクをとって3G急旋回程度は楽にこなすことが出来ます。ただ、ボーイングB737旅客機と同じエンジンを使用しているため 飛行時の騒音は大きい部類に入ります 。

 これだけの性能を持つのに何故、自衛隊の主力輸送機になりきれず、かつ後年になってC−130を導入することになったのでしょうか。。C−1最大の弱点は航続距離が短いこと。硫黄島への訓練飛行でも増槽が必要です。これはC-1開発当時の国内世論により、あまり長距離を飛べると近隣諸国の恐れになるという政治的配慮や、まだ沖縄が日本本土へ復帰していない状況で、国内だけの使用を前提としたためで、そのために機体の大きさや航続距離性能に制限を受けてしまいました。それがC-1の足かせとなり自衛隊の主力輸送機になりきれずに後年、時代背景の変化で「空輸能力の強化」を理由に、C−1の航続能力の不足をカバーするためにC-130Hハーキュリーズ輸送機(航続距離7800km)を導入せざるを得ませんでした。C−1は、当初調達予定の約半数の31機で生産が終了しました。今日の国際貢献を旗印に日の丸をつけたC-130が海外へ幾度も飛び立っていくシーンを当時誰が想像できたのでしょうか。。。

現在は、事故による損出の4機を除いて27機が稼働中。岐阜基地の飛行開発実験隊に001、002。入間基地の総隊電子戦訓練隊に021(ECM訓練機)。残りの24機が第2輸送航空隊(入間)と第3輸送航空隊(美保)にそれぞれ半数づつ配備されています。

現在、C-1の後継機(C-X)の開発が進められています。海上自衛隊の次期対潜哨戒機と一部共用化を図ることでコストを下げ 、なお輸送能力はC-1とC-130Hハーキュリーズのいずれも上回るものになります 。

乗員 5名
全長 29.0m
全幅 30.6m
全高 9.99m
主翼面積 120.5u
キャビン寸法 W2.7m×L10.8m×H2.55m
運用自重 24,100kg
全備重量 39,000kg
最大離陸重量 45,000kg
エンジン プラット&ホイットニー社製JT8D-9(ターボファンエンジン)
最大推力6,557kg x2
最大速度 時速787km
巡航速度 時速685km
離陸速度 194km/h
着陸速度 204km/h
実用上昇限度 40,000ft
海面上昇率 3,500ft/min(ペイロード4,500kg)
離陸滑走距離 460m
着陸滑走距離 600m
燃料搭載量 12,200kg
最大積載能力 貨物8,000kg
兵員60名
担架患者36名または救急車1台
落下傘降下隊員45名
コンテナパレット3枚
航続距離 貨物8,000kgを積載して1,300km空輸
貨物6,500kgを積載して2,200km空輸

価格: 41億5,700万円(調達時)