航空自衛隊 中等練習機 T−4
2005.11 岐阜基地航空祭 #601
2000年10月 百里基地航空祭
2001年5月 百里基地 204SQ
2001年7月 百里基地 204SQ
1997年8月 松島基地
1997年11月 入間基地航空祭
T-4は、航空自衛隊で使用されている純国産のターボファン双発複座中等ジェット練習機です。1981年4月15日に防衛庁が出した新中等練習機の提案要求に対して三菱重工業(株)、川崎重工業(株)及び富士重工業(株)の3社がそれに応じ、それぞれ独自の機体案を提出した。結果、この年9月に川崎重工案が最適と認められ、川崎重工を主契約社(プライム)とし、三菱、富士の二社を協力会社とする開発体制が決まりました。3社の分担は川崎重工が37.9%。他の各社は概ね30%づつの分担になっています。
T-4は航空自衛隊の飛行教育体系中で、それまで使用されてきたT-33とT-1に代わる中等練習機です。21世紀初頭まで使用することを念頭に置いて作られています。T-4の設計方針のひとつには、新技術を積極的に取り入れることでした。この方針に従い、開発の段階で考えられる限りの新技術が採用されました。レーザージャイロ方式の姿勢方位基準装置(T-4用に開発)、デジタル・データバスシステム、機上酸素発生装置(従来は液体酸素)、複合材の多用(使用量は構造材料の約4.5%)などです。 また、構造設計に損傷許容設計を取り入れるとともに、整備管理には構造安全管理方式(ASIP)を採用しています。損傷許容設計とは、初期欠陥の存在を前提として設計する新しい手法であり、ASIP`は、コンピュータを駆使して製造から退役まで機体を個別に管理する一種の整備管理システムのことです。
T-4のアウトラインを概観すると、胴体はメーカー3社による共同生産の便宜を考えて、全胴、中胴、後胴の3分割構造になっています。外観は、ずんぐりむっくりです。これは、低速から遷音速までの広い範囲で、優れた飛行特性を有し、スピン訓練が出来ることも要求されているため、高迎角時、空気の流れが上手く流れる様にノーズ(機首)からテールまで短くするとともに、胴体、翼などのあらゆる箇所を丸く作っている為です。機体全体の大きさのわりに大きめの垂直尾翼は、スピンからの回復を容易にするためのものです。欧米諸国でT−4と同等の性能を持った機体と比較しても、それと似たような形状をしています。コンピュータ設計では、設計理論式が決まっており、要求する性能の数値を入力すると、出力されてくる結果は同じ様になるため、結果、似たような形状になるのでしょう。
全機低速風試模型(かがみはら航空宇宙科学博物館)XT-4開発の第一次契約は1982年度に発注されて細部設計が始まり、XT-4試作1号機は、1985年4月17日にロールアウト。同年7月29日に初飛行しました。 T-4 量産1号機は1988年6月28日に進空。 XT-4の1号機は1985年12月12日に航空自衛隊に引き渡されました。部隊配備は1988年9月20日より開始。2002年度までに218機を生産し、それで調達は一応終了した。
平成15年度(2003年)の防衛庁、政策評価書(事後の事業評価)によれば、昭和61年から平成14年にかけて計208機を取得。経費総額は約5,181億円とされる。T−4導入の効果として飛行教育のためT−1で85時間、T-33Aで100時間、合わせて185時間を要していた飛行時間を、両飛行教育で重複する離着陸空中操作等の共通科目を削減することにより合計160時間となり、これまでと比較して25時間の短縮を達成できたとされる。国家予算圧縮にともなう防衛予算抑止政策の中で、各事業におけるコスト削減は避けられぬこととは思うが、実際の訓練をうける候補生らにとってはこの削減された25時間というのはもしかして貴重な時間であったのではないか。ファイターパイロット養成として以前はT-3>T-1>T-33A>T-2>戦闘機と段階的に行っていたものを、現在はT-7>T-4>戦闘機と時間だけでなく機種も圧縮された。これは以前に比べ訓練は体力的にもより過酷になったのではないか?という印象がぬぐえない。
■全幅 9.8m ■全長 13.02m(ビトー管を含む)■全高 4.83m ■翼面積 21.06u ■運用重量 3,800kg ■最大離陸重量 7,650kg ■ エンジン F3-IHI-30B 1,870kg ×2 ■最大速度 最大速度 M0.9(外部搭載なし) ■海面上昇率 10,240ft/min ■実用上昇限度 43,000ft ■航続距離 700nm/25,000ft(M0.7) ■離陸滑走距離 1,820ft ■着陸滑走距離 2,210ft ■乗員 2名
調達価格 30.2億円/機(防衛庁平成10年度防衛力整備の概要より)