海上自衛隊 初級操縦練習機


1999年5月 宇都宮飛行場

↑ 2002年5月 下総基地 スカイフェスタ

T-5は、海上自衛隊が使用している初級操縦練習機です。P−3C等の大型機パイロットを養成するために開発した機体のため、小型機でありながらサイド・バイ・サイドの操縦席を持ち、操縦桿ではなく操縦輪を装備しています。海上自衛隊はパイロットを養成するために富士 KM−2を長年使用していましたが、第一線で使用する機体がレシプロエンジンからターボプロップへと移行しつつあった状況を鑑み、操縦士訓練の初期段階からターボプロップエンジン独特のレスポンスへ慣れておく必要があると考えるようになっていました。また使用燃料 の統一という効率性の問題もあったため、KM−2の後継機はターボプロップエンジン装備とすることにしたのです。
 T−5は、T-34Aをベースにした初等練習機KM-2の後継機として富士重工業(株)で開発がはじまります。開発に当たり、まずKM-2のエンジ ンをターボプロップ(アリソン250-B17D(420shp)、350shpにフラットレートして使用)に換装し、主翼端を跳ね上げ、垂直尾翼を後退角付き にするなどの大幅な設計変更を加えたKM-2Dが製造されて1984年6月28日に初飛行しました。この機体でのテストの結果、同機に取り入れら れた改良点に加えコクピットを拡大し、キャノピーを透明化した上、装備品類も更新されたKM-2改(後にT-5)が開発され、1号機は1988年4月27日に初飛行しました。機体はT−34やKM−2とほぼ同じもので、並列複座配置・補助席付きの4座とされています。これは海上自衛 隊で運用される固定翼機は大型機ばかりで、戦闘機パイロットを養成する航空自衛隊とは要求される能力が異なるためです。視界を広く取 るための大型キャノピーや安定性を高めるために若干の後退角が付いた主翼などのおかげでこれまでの機体に比べ格段に操縦しやすい機体 となっています。 使用しているエンジンはT−34Cが使用しているP&Wカナダ社製PT6に比べて軽量低燃費で、KM-2のレシプロエンジンからターボ プロップとなり、飛躍的なパワーアップが図られました。なお、このエンジンは定格出力420馬力ですが、訓練学生の誤操作時のオーバ ートルクを防ぐため350馬力に出力を抑えてあります。1号機は1988年8月30日に海上自衛隊に引き渡され、第51航空隊での実用試験の後、1989年3月から小月教育航空隊群へ部隊配備が開始され ました。1998年度までに38機が引き渡され、これで調達は終了しました。現在までに全機が小月基地の第201航空隊に集中配備され、海上自衛隊パイロットの初等教育を担っています。 

全幅 10.04m
全長 8.44m
全高 2.96m
主翼面積 16.5u
機体重量(自重/全備) 1,082kg / 1,585kg(A類)、1,805kg
(U類)
(曲技飛行時はA類、汎用飛行時はU類と分類される)
離着陸距離(離陸/着陸) 385m / 480m
発動機 アリソン250-B17Dターボプロップ×1
出力 350shp(フラットレート)
プロペラ ハーツェル
直径2.28m/3枚羽根
燃料容量 99gal(機内)
飛行速度(最大/巡航) 380km/h / 287km/h
実用上昇限度 23,000ft
海面上昇率 1,800ft/min
飛行航続距離 950km
武装 無し
乗員 2名(前席)+2名(後席)


調達価格 5億円/機(防衛庁平成10年度防衛力整備の概要より)