The First Impression in かのせ
1999.4.29
JR磐越西線
日出谷駅

プログラム

ワルツ舞踏
11:13−11:32

開会

演奏:新潟大学管弦楽団
「日本の歌」から
どこかで春が、花の街、春の小川、夏は来ぬ

ワルツ舞踏:大宮市宮原公民館・ダンスサークル
「エーデルワイス」
※SL停車11時29分15秒

SL出発/閉会

ミニコンサート
13:15−14:30

開会

主催者挨拶
鹿瀬町長

ミニコンサート
演奏:新潟大学管弦楽団

ハンガリー舞曲第5番
「日本の歌」から
どこかで春が、花の街、春の小川、夏は来ぬ
アイネ・クライネ・ナハトムジーク
K525より第一楽章
エーデルワイス
線路は続くよどこまでも
汽車ぽっぽ
ワルツ「美しき青きドナウ」作品314

終演

プログラムは当日日出谷駅で配布された資料によるものです

 

 

「今日は晴れるかな−」

車のハンドルを握りながら空をながめて思わずつぶやいた。今日4月29日。祝日でありゴールデンウイークと呼ばれる大型連休初日。そして多くのSLファンの待ちに待った記念すべき日でもある。

新潟県新津市の新津市第一小学校に静かに眠っていたC57-180蒸気機関車。新潟地域で活躍したこのSLは昭和44年にその使命を終えたはずだった。しかしそれは地元の方々の熱い願いと共に復活の日を迎えることになった。それが今日、1999.4.29である。

東北道から磐越道を抜けながら、終始空の様子を見る。今日の磐梯山は良く見えない。会津盆地に入ると急に青空が広がって来た。まだ西の空に鉛色の雲があるがなんとかもつだろうと期待をかけてさらに津川I.C.を目指す。高速道路を降りて一般道へ入り鹿瀬を目指す。すでに試運転で数回訪れているため、道に迷うことはない。沿道に見える水田では田植えが始まっている。日出谷駅前に着いたのは朝8時半頃。すでに鹿瀬町の方々がミーティングをしており、セレモニーの準備が始まりつつある。先乗りしていた「ふなまる」さんと合流し、駅前に車を置かせて頂いて今日は1日ここで張り付いてセレモニーを見届けることにした。

SL列車を迎えるためのセレモニーは舞踏会の雰囲気を出すもので、駅ホームは赤い絨毯をあつらえた即席舞台もセットされている。オーケストラの演奏する場所もかつて軌道のあった場所に特設されている。P.A.も専門業者を呼びよせて本格的にセッティング。向かい側の道路を走る車の音まで拾ってしまうシビアな調整には驚き。まもなくオーケストラのメンバーを乗せたバスが到着。楽器を運び出す。すると、駅の向こうからタキシードと中世紀調のドレスを身にまとった紳士淑女の一団が闊歩して向かってきた。まずはリハーサルが始まる。その間にも町民の方々が続々と日出谷駅に集まってくる。駅前にはBGMが流れ、給水所もできてお茶のサービスも頂いたり、郵便局も臨時販売所もでたりどんどんにぎやかになっていく。マスコミも出始めてきた。上り列車のセレモニーでは関係者とマスコミ以外ホームには入らないでくれということなので、その周辺をうろうろしながら雰囲気を味わうことに。

しかし、朝方まで日差しがあった駅周辺がだんだん薄暗くなってきた。見ると鉄橋のある方向の山並みが霞んできている。まもなく降雨があると考え三脚にカバーをかけた後、屋根のあるところで待機していると案の定の雨。リハーサル中の降雨に会場がざわめく。このあと雨が降ったり止んだりを繰り返し。気温も下がってきており風も出てきて本当に寒くなってきた。オーケストラのテントにはストーブが持ち込まれ演奏者が震えながら指先を暖める光景が見られた。 

時間も11時を回りいよいよセレモニー本番が近づく。駅周辺はたくさんの人たちに取り囲まれている。そしてオーケストラの軽やかな演奏とともに女性司会者の一声で「The First Impression in かのせ」がスタートした。ホームでは衣装を見にまとったダンスサークルのメンバーが踊り始める。そしてついに長い汽笛が山々を轟かせてC57-180牽引のSLばんえつ物語号が入線してきた。それと同時に雨が強く降り出した。普通だったら外にいる人はみな屋根のあるところに逃げてバラバラになりそうだが、この時ばかりはもう雨に関係なく、皆SLに気持ちが集中しているためか、みんな興奮状態、大騒ぎです。大勢の人が線路端に近づきすぎてJRの保線区員の方が警戒に走り回ること。おお賑わいの中SLは定刻通り雨の中、白煙を上げて日出谷駅を出発していきました。TV局の方が、ホームを降りてドレン付近でかぶりついて撮影していたためと、線路端に見物人が近づきすぎたため、かなりホームを出た先でドレン切りをやっていました。降雨の中でもダンスはやりとげたようでSLが発車していったあと、ダンスの面々は安堵の顔をして退場していきました。その後も雨は強く降り続き1時間近くも外に出られず釘付け状態になりました。それから駅近くの食堂で昼食(やまとや食堂でラーメン大盛り)をとり、食事を済ませ店の外へ出ると、皮肉にもピーカンの晴れ間が広がっていました。

下りSL列車が到着するまでの時間、日出谷駅構内では午後のイベントとして招致した新潟大学オーケストラによるミニコンサートが開かれました。雨が上がったとはいえ、依然として風はは強く時より雨交じりで吹いてくるので演奏するほうも、聴く方も結構大変でしたが、いつもは静かな山間の町にオーケストラの奏でる音が響くのもなかなかのものでした。

一通りのプログラムが終了し、駅は撤収モードに入りました。ダンスサークルやオーケストラの方々がバスで次々と帰っていき、駅は徐々にいつもの静けさを取り戻していきます。そして下り列車が到着する時間16:52が近づくにつれ、再び駅前がにぎやかになってきます。再び町内放送がなされ下り列車の到着とドレスを着飾った女性達が乗り込むことを告げます。午前中のダンスサークルの面々と代わり、地元の若い女性達6組が中世調のドレスを着飾って駅前に集合。さすがに女性達の周りにはギャラリーが集中します。

エスコートの男性陣を従え、6両編成の各客車停車位置へ配置についた彼女たちは、一輪の花の束をかごに下げて待機。そして定刻通りSL列車が入ってくると彼女たちはそれぞれの車両に乗り込みます。車内では蜂の巣を突ついたような騒ぎになっています。そしていつの間にやらSL周辺には多くのギャラリーが集まっています。向かえ側の道路にも午前中同様見物の車が列をなしています。彼女たちはこれから客車のなかで花や町のパンフレットを配りながら津川駅まで乗車するそうです。

1分ほどの停車の後、SLは長い汽笛をあげ出発。西の方角へ向かうSLは傾きかけた太陽の光の中へ吸い込まれて行くように見えました。

 

 

 

 

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この年お邪魔した新潟県鹿瀬町は2005年に近隣の町村と合併し現在は阿賀町となっています