航空自衛隊 中等ジェット練習機
T-1は戦後初の国産ジェット練習機として富士重工で開発されたもので、航空自衛隊が使用していた T−6テキサン練習機の後継として開発要求された機体である。ブリストル(現、ロールスロイス)・オーフュースMk.805エンジンを装備したT1F2(T-1A)と、国産のJ3-IHI-7Bエンジン(IHI製)を装備したT1F1(T-1B)がある。開発当初はエンジンも国産のJ3を装備する予定であったが、エンジンの開発が間に合わず、Mk.805を搭載したT-1Aが先に生産されることになった。縦列複座操縦席、全金属構造片持ち低翼単葉というオーソドックスな設計であるが、強い後退角のついた主翼を採用するなど新しい点も盛り込まれた。T-1Aの納入完了前にIHIのエンジンが完成したため、原型のT1F1を初飛行にこぎつけた。Mk.805に比べ燃費はいいものの出力が低いものであったが、所定の飛行性能を示したためT-1Bの名前で採用された。1965年にはJ3エンジンの出力をアップさせたものを搭載したT1F3が初飛行し、T−1A全機をT−1Cの名前で換装する計画があったが、2機のみ改修されただけで計画は中止された。換装された2機(#801,810)はT-1B-10となる。
固定武装として機首下面右側に12.7mm機関銃1丁を装備可能だが、2号機でテストが行われただけで実際に装備されたことはなかった。T-1Aの1号機は1958年1月19日に初飛行、J3を装備したT1F1(T-1B)の1号機は1960年5月17日に初飛行している。実験航空団(現 飛行開発実験団)で実用テストが行われた後に1960年から第13教育飛行団(芦屋)に集中配備され、第二操縦課程の訓練飛行に充当された。A型は46機、B型は20機。A,B型とでは性能が異なるため実際の教育に当たっては航空学生の混乱を避けるためにA,B各型に分かれて実施された。T−1は後継機のT−4の登場により、芦屋では2000年12月までにT−1型による教育訓練は全て終了し、2001年1月までに全機がT−4へ機種改編されてしまっている。T−1Aは2001年2月1日付けで全機退役。同年3月には用途廃止になった。現在は、T-1Bが小牧の第5術科学校(H17年10月時点で4機)と岐阜の飛行開発実験団で使用される(#810)のみである。第5術科学校では、要撃管制幹部課程の目標機として、J空域(主に日本アルプス上空の空域)を中心に活動。平成17年度(2006年3月)まで使用される予定で、その後全機退役する。
T−1型機は国産初のジェット練習機であるが、さらに特筆すべきことは世界トップレベルの1万時間を越える無事故飛行を続けたことです。
《性能諸元》
■全幅 10.49m ■全長 12.12m ■全高 4.08m ■主翼面積 22.22u ■運用重量 2,767kg(A) 2,858kg(B) ■最大離陸重量 4,150kg(クリーン)(A)、4,990kg(増加タンク付き) 4,355kg(クリーン)(B) ■発動機 ブリストルシドレー・オーフュースMk.805(A)、ターボジェット×1 石川島播磨J3-IHI-7B(B)ターボジェット×1 ■推力 1,815kg(A)1,400kg(B)■燃料容量 365gal(機内) 最大605gal (120gal×2の増加タンク) (A)、415gal(機内) 最大655gal (120gal×2の増加タンク) (B)■最大速度 M0.8(外部搭載なし)(A) M0.78(外部搭載なし) (B)■実用上昇限度 53,000ft(A) 44,000ft(B)■海面上昇率 6,500ft/min(A) 5,210ft/min(B)■飛行航続距離 923km(増加タンク付き)(A) 898km (B)■武装 なし(12.7mm機関銃×1搭載可能)■乗員 2名